2019-02-03 APS「プレート競技」レベルアップ講習会レポート

先日、当クラブと「あきゅらぼ」の共催で「APS『プレート競技』レベルアップ講習会」を開催いたしました。地元の射手はもちろん、西は九州、東は東京から合わせて20余名の方にご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。この記事では、当日の様子をちらっとご紹介いたします。

なお、講習内容についてはガンプロフェッショナル誌の「ピストル講習会」連載で詳しく取り上げられるとのことです。こちらも楽しみにお待ち下さい。

はじめに

プレート競技に限らず、射撃の技術を体系だてて知る機会はあまりありません。断片的なものに触れる機会はそれなりに増えてきたと思いますが、中には根拠のないオカルティックな手法、二者を比べた時に矛盾するものもたくさんあります。こうした中から自分に合ったものを選ぶにしても、何を基準にしていいのか分からない……という人は多いのではないでしょうか。

そこでオリンピック経験者で現役の射撃選手・コーチのお話を聞く場を作ってみよう、なんなら基礎から鍛え直してもらおう!という話となりました。

講師紹介


今回講師をお願いした木田知宏先生はアトランタオリンピックのラピッドファイア競技に日本代表として参加。現在も各種競技で活躍する一方、日本ライフル協会のコーチ資格を取得し後進の指導もしていらっしゃいます。

今回は初心者からベテランまで色々なレベルの人が参加するということが予想されたことから、プレートだけでなく基礎部分のおさらいもやっていただきました。

まずは射撃の基本から


競技としての射撃と、エンタテイメントとしての射的の一番の違いは「再現性」にあります。「何回かやればベストスコア/タイムが出ることがある」というのでは試合になりません。

どうすれば毎回同じように射撃することができるか?まず「ボディバランス」「トリガーコントロール」「照準」の3つが基本的な要素となります。さらに試合でのストレスを管理し、この3要素をいつも発揮できるよう「メンタルコントロール」を身につける必要もあります。

そして3要素の各技術の流れをルーチンに落とし込み、これをスムーズに毎回同じように実行していくことで再現性を高めていきます。

……と書くとシンプルなようですが、身体的・心理的要素の個人差を考えると、これをどう実行するかはまったくもってバラバラ。当然練習方法もバラバラ。よく言われる「据銃練習」も単純に筋力を鍛えるもの、構える能力を鍛えるものの2種類があるなど、自分でうまく組み合わせなければなりません。

またボディバランスが高く銃をきれいにとめることが出来てもトリガーコントロールが甘ければ外します。逆に照準力が高ければ多少ボディバランスが悪くても「当たってしまう」こともあります。それぞれの能力のバランスや練習による向上に応じて戦略を変えていくこともあるでしょう。

ここまでで約1時間。その後、内容を踏まえてスタンスやドライファイア等を実際に試してみたり、狙う能力を上げるための据銃練習を一緒にやってみたりしました。写真は質問攻めに遭う木田先生。

プレート射撃は「型の射撃」


お昼休みを挟んで、いよいよ本題である3秒射撃の世界に入っていきます。

木田先生によれば、ブルズアイ射撃はそのルーチンの組み立て方に個性が大きく出る射撃であるのに対し、ラピッドファイア等の速射競技は「型の射撃」であるそう。前者が陶芸家が1枚1枚お皿を作っていくイメージであるのに対し、後者は決まった形のものをいかに精度良く作っていくか、という感覚なのだそうです。

命中させるために必要なタスクは同じでも、1発1分近くあるブルズアイ射撃と、1発1秒しかないラピッドファイア射撃ではパッケージングが大きく違います。短い時間の中に精度を詰め込んでいくため、動きの作り方も違ってきます。

またタイムや的の仕様、トリガーの重さといった要素以外に、競技ルールも動きの作り方に影響を与えます。ISSF競技とAPS競技ではトリガーに指をかけるタイミングに関するルールが違うため、うまく読み替える必要があります。

話を聞いた後は再び練習。今回、クラブのものだけではなく個人のプレート機もお貸しいただきたくさん並べることができました。お礼申し上げます。

再びドライファイア・実射で、教わった内容を試してみる人たち。

話を聞いて、実際にやってみて、そして分からなかったこと・新たに浮かんだ疑問は即座に質問して解消。木田先生のおかげで大変濃い講習をしていただきました。

おわりに

普通、こうした技術講習会は何日間かに渡って行われるものが多いのですが、それを1日に圧縮して頂いたため非常に情報量の多い講習会となりました。

新しい知識やヒントはもちろん「聞いたことがある」「知っている」という内容についても、なぜそうなっているのか、どうしてそうするのかという深い部分の学びがあったと思います。この辺り、受け手のその時の課題や関心で得られるもの・感じられるものは違ってくるものなので、是非他の方々のレポートも読んでみたいものです。

今後も当クラブでは、テーマを変えて、定期的に技術・ノウハウ講習会を開催していきます。気になるものがあれば是非ご参加いただき、知識を持って帰ってもらえればと思います。

以上です。木田先生、「あきゅらぼ」の池上さん、準備をお手伝い頂いた方々、機材をお貸し頂いた方々、参加された方々にあらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。