
Chakaです。代表をやらせてもらっています。大変ご無沙汰しております。先日、アメリカ生まれの最新2Gunマッチのルールセット「PCSL」をクラブでやりました。にわかPCSLシューター&即席PCSLマッチディレクターとして様々な知見を得ましたのでご報告したいと思います。
PCSLって?
一言で言うとアメリカ生まれの最新3Gunプラクティカルシューティング競技のルールセット※です。「プラクティカルシューティング」というのはスポーツ射撃のジャンルの1つで、毎回違う配置のターゲットを移動しながら撃って得点していく、というスタイルの競技です。3Gunというのは文字通り複数の銃を同時に使いわける、という意味です。つまりライフルとハンドガンとショットガンを持ってガシガシ走ってモリモリ撃つ、と、そういう競技です。
※プラクティカルシューティング競技にはものすごくたくさんのルールセットがあります。うちのクラブでやっている「IDPA」もそのうちの一つです。
実銃PCSLの動画。すごい広い射撃場で思いっきり走ってめちゃくちゃ遠くの的をライフルで撃ちます。楽しそう!
主催者のマックス・レオグランディスはアメリカのプラクティカルシューティング競技USPSAのライフル部門、マルチガン部門の名手ですが、そういうベテラン射手が作ったルールセットなだけあって「射手ファースト」な感じ。射撃ルールはミニマム、現場でよくモメるところは明快に、そして「普段3Gunやってないクラブが1回やってみようかな、という時のために作った」と言う通り、組織運営とかマッチ開催の申請とか、射撃に関係ない部分はバッサリカット、などなど、大変遊びやすい内容です。
エアソフトの世界だとあんまり関係ない話ですが、ちょっと大きなルールセットだと、地区大会的なローカルマッチをやるのにも団体登録して試合開催の度にステージデザインのレビュー通して審判揃えて地域理事呼んで……とかやらないといけません。
でもPCSLはそういうのナシ。PCR(PCSLにおける段級制度。試合の実績から計算されるレーティング)に参加したりとか、大きい試合やりたいなら会員になったりクラブ作ったりしてね、くらいのユルさ。装備の部門分けもユルくコア部門は「めっちゃ自由」と「まあ自由」の2つしかありません。ちなみに「オープンソースなルール」を謳っており、Level 0マッチでは「◯◯クラブ版PCSLルール」を手続きなしで使えます。
初めてのPCSLに向けてやったこと
1回ルールは通読してみよう
とまあ、シンプルかつユルいルールセットではあるのですが、マトモに3Gunマッチを撃ったことがない人間がマッチディレクターとステージデザインをするのはいかんじゃろ、ということで理論武装をすべくまずルールブックを翻訳しつつじっくり読んでみます。

ルールブックの読み方の勘所について。プラクティカルシューティングのルールは、基本的には「(1)ブザーが鳴ったらすべてのターゲットに対して2発撃ち(2)しかるべき方法で採点する。(3)危険行為と(4)ズルにはペナルティを課す」です。この3つ、特に(2)と(3)がルールセットによって微妙に違うというか特色の出る部分なので、重点的に読んでいきます。
PCSLの場合(3)は14章と15章、そして(4)は12章にまとまっています。あと、いくつか「銃の種類によって撃っていいターゲットが決まっている」「銃を残置するときは弾を抜く、または指定されたターゲットを撃つ前に弾倉を抜く(DMTプロセス)」のような2Gunに特化したルールがあります。
(2)はヒットファクター(HF)方式。ターゲットごとにスコアが設定されており、取得したスコアを生タイムで割って算出されるHFの多寡で勝負をつけます。プラクティカルシューティングの基本的なコンセプト「速度と精度のバランス」を数式にするとこうなります。加点法ですね。小数点第4位まで計算するので、生タイムの差がコンマ何秒と小さくてもHFでは差がつくので、スプリント的性格のルールセットで使われます。
普段撃ってるIDPAはミスが生タイムに加算されていくTime Plusという形式。減点法ですね。コンマ何秒の競技でミスのペナルティが1秒単位だとかなり重たいので、射撃時間が比較的長めの競技で採用されていることが多いです。100メートル走だと1/100秒まで測定するけど、マラソンだと秒までだよね、と同じような感じでしょうか。採点が足し引きだけなので簡単であるというのもメリットです。
ちなみにIDPAがTime Plusを採用しているのも採点が簡単だからですが「実戦における流れ弾は周辺の被害につながるので極力さけなければならない」という競技の成り立ち上の理由もあるのかなと。2017年の改定で0.5秒単位から1秒単位でのペナルティに強化されたのも、そこらへんの性格の強調ということと思います。
採点方法の違いは運営だけでなくステージの「攻め方」というか得点の取り方、プランニングの方法にも大きな影響があります。採点方法に応じて考え方を変えられるのがやはりかっこいいのでは。まあゆっくり撃てばなんでも一緒ですが……
その他の記述で目立つのは、例えば「トイレ休憩などでブリーフィングに参加しなかった射手は審判に申告すべきである。審判はブリーフィングの内容を伝えるべきであるが必須ではないし、射手はそれが原因で不利益を被っても抗議できない」とか、反動を抑制する「マズルブレーキ」について、具体的な製品名で該当するか否かを色々列挙していたりとか「『装填された火器』とは……弾や薬莢が内部にある火器である(※)」レベルのこまかーい規定とか用語定義がいっぱいあります。ルールの作者が有力選手なので、マッチの現場でよくモメる内容についてはしっかりカバーしている感じがします。
※この定義が重要なのは、ステージ中に銃を残置する際、弾が抜けていないとダメなのにも関わらず「弾倉が空ならいいだろう」とか「ストーブパイプジャムで明らかに撃てない状態だからいいだろう」とか「薬莢が薬室にはりついて機能停止してるんだからいいだろう」などとモメにかかる人が出るからです。
面白いのは「コーチャブルな射手」制度。普通、コーチング(他人からの助言)は反則なのですが、射手は事前申告しておくと順位がつかない代わりにありとあらゆる人からコーチングを受けてOK、というものです。例えばブザーが鳴ったら審判が射手を誘導して安全にステージを終わらせる、とかもOK。何の競技のどこのクラブでも非公式にやっていることですが、これが明文化してあるのはいいなと思います。
装備をそろえよう
PCSLで必須なのはアイプロテクションに加えて「ハンドガン」と「ベルトとホルスター」、あと2Gunマッチの指定であれば「ライフル(PCCでも可)」。3Gunだと加えて「ショットガン」。マガジンポーチは「推奨するが無くても良い。ポケットでOK」ライフルスリングは「無くてもよいがステージの指示で使うことがある。邪魔なら射撃中でも外していい」とのこと。
ステージを書くのはわたくしなので、スリングを使うステージを書かなければ今回不要です。つまり普段のベルト周りにライフル1丁とライフル用のマガジンポーチを足せばとりあえず遊べます。そういうわけでこういう感じに。実銃の2Gun、3Gunだとかなりの重さの弾薬を持ち運ぶのでこれだとベルトの固定が負けそうな気がしますが、まあエアソフトだからOKとします。

カルチャーを理解する
せっかくPCSLをやるので「PCSLらしいPCSL」をやりたいわけです。ルールセットは書き手の思想の表現で、そこに沿ってやらないといけません。
例えばテニスだと、相手の体にボールを当てた場合は自分の得点になるルールですが、だからといって「テニスとは相手のボディにボールを当てるスポーツです」とはいいません。ルールブック通りにやってるだけではその競技にはならず「そういうもん」「らしさ」を理解するのがPCSLに限らず大変重要です。
とりあえず過去のPCSLのステージデザインを調べ動画をたくさん見てPCSLメンバー登録して公式フォーラムの意見に目を通し、PCSLを撃ったことのある知り合いに直接質問して、カルチャー、空気のようなものを理解します。
PCSLは歴史が浅く、とかく雰囲気がフレッシュです。YouTubeなどの動画も使っているカメラが新しくてきれい、ドローンでの空撮動画もあったり編集も凝ってます。銃や装備もオーソドックスなレース用に加えて、ミリタリー調のいわゆる「ファーストライン」を使う人がいてバラエティ豊か。ステージデザインも他の競技からモダンなスタイルでやって、Practisim Designerなどのデジタルツールで清書する、採点用のPractiScore2にも専用のモードがある、などまあイマドキです。
さて、これでなんとかにわかPCSLシューター&即席PCSLマッチディレクターになる準備はできました。あとは実地でテストしてみるだけです。
何をテストするの?
世の中にプラクティカルシューティングのルールセットは本当にたくさんあるのですが、キモになるのはCoF(ステージデザイン)です。メジャーなルールセットでもCoFが面白くないと、それはもう悲惨なことになります。今回の「やってみる会」の個人的なキモもそこで、CoFで色々テストしたいことがあるわけです。どうすれば面白いか?どういうのはつまらなくなるのか?
例えば距離はどれくらいあると難しくなるのかな、とか。
ライフル持たせて狭い隙間を走らせようとする時、幅は最低どれくらいいるのかな、とか。
ライフル20発、ハンドガン20発みたいなステージを書くと何が起こるのか、とか。
ハンドガンは取り回しがいいが遠距離はそんなに得意ではない、ライフルは取り回しが悪いが遠距離は得意。銃の属性で撃ちやすい要素、撃ちにくい要素は変化します。またPCSLというかライフルマッチだと山道走って200メートル先の向こうの尾根の的を撃つ、みたいなのがよくあって、エアソフトでもぜひ入れたい要素なのですがじゃあどれくらいの距離が限界なのかな、とか。市販のエアソフトが十分な命中精度を維持できるのは15メートル程度でしょうが、では縮小ターゲットをどう使うと面白いのか……など、疑問はつきません。そこんところを実際撃ってみて試してみました。
そういうわけで都島区民センター。いつもお世話になっております。

とりあえず勝手がわからないので、でっかく1面とってみる。幅13メートル✕奥行き15メートルです。

どれくらいデカいかといいますと、普段のレンジと比べてこれくらいデカい。

PCSLはハンドガンとライフル、ショットガンの3種類の銃を使うルールセットです。試合を告知するときに1Gunマッチと指定してあればハンドガン、ライフル、ショットガンのどれか1種類指定されたもの、2Gunと指定してあれば必ず2種類使い、ステージごとに1Gunだったり2Gunだったりします。3Gunも同様。
今回ショットガンは割愛しますので、ステージの形式としてはハンドガン1Gun、ライフル1Gun、2Gunとなります。これを1ステージずつやってみましょう。ステージデザインは過去のマッチのものを参照して、とりあえず置いてみました。
ハンドガン1Gunは左右に移動しながら、スキマから撃っていこうというデザイン。

IDPA風にカバーラインを引くとこう。ストップアンドゴーがてきめんに増えています。

まずは慣れたハンドガンでやってもらいました。上の図の通り、IDPAだと開口部にはたいていカバーラインがあってストップすることになるので最初はみんな戸惑いながら撃ちます。

ハンドガンのCoFは同じ拳銃弾を使うPCCでも参加できます。エアソフトだとなべて6mmBB弾ですが……。

ヒットファクター方式では、多少人よりドロウとか射撃自体が早くても、どのルートを通るかとか、ここまで来たら左足から出してこの辺からポジションに入るのに減速して……とかのプラニングでひっくり返ります。採点方法を理解し、その中で高いスコアを得られるように組み立てるのが大事です。そしてステージデザイナーはそういう攻め方ができるような配置を考えなければなりません。
ちなみによく誤解されるのですがステージデザイナーは「どう撃つのが一番早いのか」を知りません。そういう最適解を設定せずに、いっぱい含みを持たせて書きます。どんな回答がベストなのかはその日来た射手次第。お題があって答がある大喜利を射撃でやっているわけですね。
なんとなく攻め方がわかったところでライフル1Gunに。ライフルなので長距離は撃ちやすかろう、という前提で基本的に遠目・小さめ。近距離は取り回しにくさが映えるように書こう、ということでこういう感じに。

元ネタはこちらです。PCSL 2024年全米大会より。
PCSL – 2-Gun Nationals Stage 1-6 preview Time to get hyped…. | Facebook

撃ってみると意外と当たっちゃう……タイトな狙いが必要なターゲットを設定しなかったので、ちと緊張感が足りませんでした。ハードカバーを貼るとかノーシュートを足すとかプレートを6cmにするとかでタイトさを演出しなければなりません。遠近のメリハリももうちょっと出すべきでした。

あとライフルというか電動ガンの問題として、射撃音があまり大きくないため、タイマーをかなり近づけるか感度を上げないといけません。なんならメカボックスの駆動音を取ったほうがいいかも。広いと採点が大変、とかライフルの抜弾の安全確保、とか審判の動きも色々検証しました。

そして最後に2-Gun。元ネタを検討しつつ見様見真似で書いてみたのがこれ。

実際の設営。めちゃくちゃ広くて体感上無数のターゲットが置かれています。わたくしの最初の感想は「アメリカ人はすげー遊びをやってるな」でした。

元ネタはやはりPCSL 2024年全米大会より。たぶん今回置いたステージよりまだ3倍くらい大きいのでは。
PCSL – 2-Gun Nationals Stage 1-6 preview Time to get hyped…. | Facebook

ステージデザインを学ぶのに一番いいのは「写経」と「書いて撃つ」です。単に写すだけではなくて、ターゲットや壁がなんでそこに置かれているのか、同じ効果を持たせるにはどうすればいいか、など考えながらやると効果抜群です。みなさんもぜひステージデザインやりましょう。子どもの頃に自作すごろくなどやっていた人は楽しめることうけあいです。
2GunのCoFでは「ライフルで撃つべきターゲット」「ハンドガンで撃つべきターゲット」が指定されるので、ステージプランニングもより複雑になります。こちらはライフル的で、公式ターゲットでは全面白色の段ボールになります。弾の直径がライフルとハンドガンで同じなので、審判をどうするかは悩みどころになるかもしれません。頭の「T」への命中はAゾーン2発と等価となるのがPCSLルール。

色々調べてみての結論ですが、おおよそライフルを撃ってからこれを置き、そしてハンドガンを撃つというのが王道のパターン。要は残置場所を折り返しとして、2つのステージが1つの配置に詰め込まれている、という感じになるでしょうか。
ライフルを撃って、肩で吊ってハンドガンを撃ち、そしてまたライフルを構え直す、というウェポントランジション技術を問うたり、クロスカントリー的なものは特殊なほうに属するようです。
実際見るとこういう風に。まずライフルでレンジ右側のターゲットを処理。

前に出つつ左方向に移動しながら色んなところでライフルを撃ち、残置場所のある左端まで。

今回はコンテナにネットを敷いて残置場所としました。ちょっと前まではプラスチックの樽をよく見ましたが、今はDump Boxという箱・ラックがよく使われているようです。

弾を抜いてライフルを置いたら、ハンドガン部分をスタート。バリケードの配置は同じですが、的の配置はまったく変わりますし多くてどれを撃ったかすぐ分からなくなるので事前のプランニングが本当に大事です。

とりあえず分かったこと
さて、やってみてわかったことですが……まず射撃~移動~射撃というのが大事なのですが、ライフルだと多少遠くても撃ててしまうので、一箇所でカバーできるターゲットが多くなってしまいます。射撃と射撃の間にスキマが生まれるよう、移動やバリケードワークを促す配置になっていなければなりません。せっかく広くとってもポジション2箇所で終わっちゃう、みたいなのはもったいないなと。
また「常に射撃している」というのは面積あたりのターゲット数が多いとなりがちです。普段のうつぼのIDPAマッチもルール上の上限の18発=ターゲット9枚で書くことが多い(※)のですが、実際のところ12発6枚、14発7枚としたほうがスキマができてよいのかもな、というところです。
※この辺、クラブとかお国柄とかそのエリアで手に入るエアソフトガンの性能とかが強く影響するところです。台湾のIDPAクラブは大量!連射!高速!近め!みたいなステージをよく書いているようです。
また距離とターゲットサイズの設定について。これは今回一番遠くのおおよそ10メートル超に置かれた的ですが、ほぼAゾーンに着弾しています。つまり簡単過ぎる。これ以上距離を取るのは会場の制限的に厳しく、エアソフトの場合精度の極端な低下が始まったり、屋外でやることを考えると風の影響も出てくるので、有効エリアを小さくするとか姿勢が厳しいとか、ステージ中にタイトさを課したほうがよさそうです。

2Gunマッチではライフルとハンドガンの特性をしっかり活かしたほうが面白いです。なので「距離」は大変重要です。同じような距離にある同じようなサイズの的を撃ち分けるようなCoFでは特性を活かしておらず、面白くなりません。
ターゲットのバリエーションはもっと色々工夫したいところです。実際に壁に隠れているターゲットと黒いハードカバーをはりつけたターゲットは決して等価ではありません。心理的な撃ちにくさというか……そういう気持ちの揺れみたいなものもエクスペリエンスであって、そこのところメリハリつけたほうが面白くなるよな、と思いました。ちなみに実銃マッチだと遥か彼方に高速スインガーが置いてあったりするそうです。エクストリーム!
終わりに
普段とちょっと違うルールセットであれこれ考えたりやったりしてみるのは新鮮で楽しいね、と思うとともに改めてプラクティカルシューティングに関して理解が深まったように思います。にわかPCSLシューター&即席PCSLマッチディレクターとしては大成功といってよいのでは。
ハンドガンと同じつもりで片手で持って、手首折れそうになりながら走るわたくし。こういうのもやってみないと分からない。

御堂筋シューティングクラブでは、これからも面白いマッチを運営して、皆さんによい1日を過ごすこと、よい趣味を見つけるきっかけを作っていきます。取り急ぎ、次回2026年4月26日(日)福島区民センターにてPCSLマッチ開催いたしますのでよろしくお願いいたします。
